【過去問倶楽部】資格対策
~ビジネスキャリア検定~
 (平成24年 後期  労務管理 2級)

【問題 36】
総合事例問題 次の<事例>を読み、設問1~5に答えなさい。

<事例>
Y社は、大阪に本店、東京に支店、全国数箇所に営業所を置き、従業員約800名により、化成品を中心とする販売を行っており、労働組合はない。
Y社の就業規則では、「①会社は、業務の都合により、従業員に転勤、配置転換を命ずることができる。この場合には、従業員は正当な理由なしにこれを拒むことはできない。」と定めている。Y社では、従業員のうち、②特に営業担当者については、出向、転勤等が頻繁に行われており、大阪、東京から地方の営業所に転勤し、2~3年後にまた、大阪、東京に戻るというような人事異動もしばしば行われている。
X氏(31歳)は、平成15年3月に大学を卒業し、同年4月にY社に入社すると同時に、大阪本店の第1営業部に配属されたが、X氏とY社との間では、③労働契約成立時にはX氏の勤務地を大阪に限定する旨の合意はなされていなかった。
X氏は、大学卒業の資格でY社に入社し、入社当初から営業を担当していたことから、④業務上の必要に基づき、将来転勤のあることが当然に予定されていた。
そして、X氏は、平成19年4月に、販売子会社であるZ社大阪営業所へ出向となり、Z社の組織に組み入れられ、賃金はZ社から支給を受けていた。その後、平成21年7月に出向を解かれ、Y社の神戸営業所勤務となり、平成23年4月に主任待遇となったが、その間、化成品の販売活動に従事していた。
Y社では、広島営業所のH主任を中国及び四国地方における化成品以外の専従者とすることとしたことから、その後任として、広島営業所の化成品販売力を増強することができ、かつ、所長の補佐もできる係長・主任・主任代理クラスの者を広島営業所へ転勤させることが必要となり、平成23年9月、当時、神戸営業所に勤務していた主任待遇のX氏に対し、広島営業所への転勤を内示した。しかし、X氏は、家庭事情を理由に、転居を伴う転勤には応じられないとして、転勤を拒否した。Y社は、同年10月、X氏に対し、広島営業所へ転勤するよう再度説得したが、X氏がこれに応じなかったため、その場で名古屋営業所への転勤を内示したところ、X氏は、家庭事情を理由に、これも拒否した。Y社は、同年11月、X氏に対し、名古屋営業所勤務を命ずる旨の本件転勤命令を発令したところ、X氏は、これに応じず、名古屋営業所へ赴任しなかった。
そこで、Y社は、やむなく同年12月、X氏に代えて、大阪営業所勤務のP氏を名古屋営業所N主任の後任として転勤させた。そして、Y社は、X氏が転勤命令を拒否したことは、就業規則に規定された「職務上の指示命令に不当に反抗し又は職場の秩序を乱したり、若しくは乱そうとしたとき」の懲戒事由に該当するとして、平成24年1月、Y社はX氏を懲戒解雇した。
Y社においては、名古屋営業所のN主任の後任者として適当な者を名古屋営業所へ転勤させる必要があったが、⑤是非ともX氏でなければならないという事情はなく、名古屋営業所において、X氏の代わりにP氏を転勤させたための支障は生じなかった。
X氏は、転勤命令が発令された当時、⑥母親(70歳)、妻(30歳)及び長女(2歳)とともに大阪市内の家屋に居住し、⑦母親を扶養していた。母親は、元気で、食事の用意や買物もできたが、⑧生まれてから大阪を離れたことがなく、地域活動にも参加していた。
⑨妻は、平成23年9月から、保育所に保母として勤め始めるとともに、長女も入所し、保育所の運営委員となった。保育所は、当時、保母3名、パートタイマー2名の陣容で発足したばかりであった。

X氏の主張は、次のとおりである。
転勤命令が、Y社の業務上の必要性に基づくものであることは認めるが、その必要性はそれ程強いものではなく、他の従業員を名古屋営業所へ転勤させることも可能であったのに対し、X氏が名古屋営業所へ転勤した場合には、母親、妻及び長女との別居を余儀なくされ、犠牲を強いられることになること、また、X氏は、平成15年4月に、Y社に入社して以来、A会社に出向したほか、神戸営業所へ転勤し、神戸営業所勤務となってから今回の転勤命令が出されるまでに、2年4箇月しか経過していないこと等に照らすと、X氏は、名古屋営業所への転勤を拒否する正当な理由があった。従って、X氏が拒否しているにもかかわらず、あえて発せられた転勤命令は( A )に当たる。X氏が転勤命令に従わなかったことを理由になされた懲戒解雇は( B )である。

Y社の主張は、次のとおりである。
Y社の就業規則には、Y社は業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、現にY社では、全国に数箇所の営業所等を置き、それらの間において、従業員のうち、特に営業担当者については、転勤を頻繁に行っている。X氏は大学卒業資格の営業担当者としてY社に入社したもので、両者の間で労働契約が成立した際にも、勤務地を大阪に限定する旨の合意はなされなかったという事情の下においては、Y社は( C )なしにX氏の勤務場所を決定し、これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を有する。
そして、使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により、労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活環境に、少なからず影響を及ぼすものである。使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではない。しかし、今回の転勤命令が、他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、労働者に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存在する場合でない限りは、転勤命令は( A )に当たらない。業務上の必要性についても、( D )することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化等、企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在が肯定される。
名古屋営業所のN主任の後任者として、適当な者を名古屋営業所へ転勤させる必要があったのであるから、主任待遇で営業に従事していたX氏を選び、名古屋営業所勤務を命じた転勤命令には、業務上の必要性が存在していた。そして、X氏の家族状況に照らすと、名古屋営業所への転勤が、X氏に与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものである。従って、転勤命令は( A )に当たらない。

5
本事例は、昭和61年当時のものをもとにアレンジしたものであるが、昭和61年以降に制定された法令・指針に関する記述として不適切なものは、次のうちどれか。

 育児・介護休業法において、労働者の配置の変更により、就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければならないとされた。

 内閣府の指針において、男性の育児休業の取得促進や、学校や地域等の様々な場で、男女が協力して子育てに関わることについての学習機会を提供すること等により、男性の子育てへの関わりの支援・促進を図ることとされた。

 労働基準法において、労働条件に関する労使対等決定の原則が規定された。

 労働契約法において、労働契約は、仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとすると規定された。

 次世代育成支援対策推進法において、事業主は、労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするため、必要な雇用環境の整備を行うよう努めるとされた。




ビジネスキャリア検定の問題番号選択画面へ

ビジネスキャリア検定(年度別)のトップ画面へ

ビジネスキャリア検定(科目別)のトップ画面へ

過去問倶楽部のトップ画面へ(資格試験の選択)


過去問倶楽部


Copyright(c) 2009 過去問倶楽部 All rights reserved.