【過去問倶楽部】資格対策
~ビジネスキャリア検定~
労務管理 2級 (サンプル 5)

【問題 36】
総合事例問題 次の事例を読み、設問1~5に答えなさい。

<事例>
甲社は、発泡スチロール製品製造加工業を営んでいる。関東地方に本社を置き、隣接県に複数の工場を有している。従業員数は、社員、パートタイム従業員を含めて全社で127名、労働組合はない。資本金は1千万円である。

労働時間及び休日は、次のとおりである。
(1) 始業時刻は午前 8 時 30 分、終業時刻は午後 5 時 30 分である。
(2) 休憩時間は、正午から午後1時までである。
(3) 休日は、毎週日曜日・土曜日、国民の祝日(振替休日を含む)、年末年始である。

甲社乙工場において、工場長である社員A(以下「A工場長」)という。)と社員B(以下、「B氏」という。)との間に紛争が発生した。乙工場は、従業員9名で、部門別従業員の構成は、次のとおりである。なお、アルファベット大文字は男性、小文字は女性で性別を表している。



B氏は、勤続3年。加工部門の主任として、パート従業員4名を指揮して業務を遂行する立場にあった。加工部門は発泡スチロールブロック(規格例:寸法約2m×1m×0.5m 重量約11kg)を、顧客オーダーに応じてカット・スライス等の加工を行う甲社の主力部門である。
B氏は、2011年11月7日(月)終業後に、A工場長に対して、「腰が痛くて立ち仕事が辛い。また、重い物を持つのも辛い。明日病院へ行ってみるので休みます。」と申し出た。11月9日(水)B氏からA工場長に対して、「医師から腰椎捻挫の疑いがあると言われた。とりあえず、今週一杯休みます。 」との電話があり、結局11月8日(火)から11月11日(金)まで年次有給休暇を取得し、休業した。
翌週月曜日から出社してきたが、A工場長に対して「医師から重い物は持つなと言われた。これから重い物は持ちません。」と一方的に言った。A工場長は、できるだけ重量のある材料を持たせないように、倉庫から加工場までの材料の運搬をA工場長やパート従業員が行うこととした。また、椅子に腰かけて作業ができるように配慮した。以後、トラブルが発生するまで、このような作業状況が続いた。
なお、11月7日に、A工場長に対して腰が痛いと言ったときには、仕事中に痛めたという内容のことは話しておらず、A工場長も、そのことについてB氏に確認することはしなかった。B氏は、腰椎捻挫の治療に当たっては、健康保険から保険給付を受けていた。


【Bの解雇】
2012年2月3日(金)甲社乙工場のA工場長がBを注意したところ口論となって、A工場長がB氏に解雇を申し渡した。事情は以下のとおりである。
A工場長は、B氏の日頃の勤務態度を芳しくないと感じていた。それは、B氏が腰椎捻挫を患ってからこれまでの間、仕事の能率が落ちたことや、B氏が他の従業員、特に加工部門のパート従業員との人間関係の折り合いが悪かったことによるものである。
A工場長は、B氏のために材料運びをしたりすることで業務の負担が増大していた。しかし、B氏はパート従業員並みの仕事しかしていないことにA工場長は常日頃から違和感を抱いていた。
A工場長は、以前に作業上のことでB氏に数度注意したことがあったが、B氏の反発がひどく、また、注意後には周囲のパート従業員に対しても当り散らしたりしたので、それを気に病んで注意することに躊躇ためらいがあった。しかし、当日はB氏の事業場内での行動に業を煮やして、注意を始めたが、A工場長が注意しているのに、B氏が聞いていない素振りをしたため口論となり、言いたいことが鬱積していたこともあり、興奮したA工場長は、「君には2月15日で辞めてもらう。それまで出社するには及ばない。それまでの会社に出てこない日については年次有給休暇で消化するから、後で年次有給休暇取得申請書を提出しなさい。提出しなければ欠勤として取り扱います。」と言ったのであった。その時のB氏の年次有給休暇の取得残日数は、20日ほどあったが、B氏はA工場長に言われたとおり、2月6日(月)から2月15日(水)までの8日分の年次有給休暇を取得することを会社に申請した。
解雇を申し渡されたB氏は、その日のうちに東京本社の社長へ解雇を取り消すように電話をし、B氏は、社長と翌日乙工場で面会した。社長は、A工場長から経緯のあらましの報告をすでに受けて事態を把握していたので、B氏に対して、A工場長の処置を支持することを伝えた。
上記の結果、Bは平均賃金30日分の解雇予告手当の支払いを受けた上で、2月15日をもって解雇されることとなった。


【A工場長の気掛り】
A工場長は、B氏は腰椎捻挫だと言っているが本当かどうかわからないこと、それを理由に、本来自分で運ぶべき材料のうち、少々重量のある材料等を自分では取り扱うことをしないのでA工場長自身が時間を割いて運んだり、パート従業員に運ばせたりして能率が非常に落ちていること等を感じていた。
一方、パート従業員からは、B氏のパート従業員に対する日ごろの指示が唐突かつ断片的に命令口調で行われていること、その指示を呑み込めないパート従業員をいびっていること、いびられたことによって退職しようと考えている者がいること、従業員全員を中傷していること、自己中心的であり、手が空いていても他人の仕事を手伝ったりしないこと等々のことがあり、B氏と他の従業員7名との間に亀裂が生じていること、また、2011年2~5月の短期間にパート従業員が3人も立て続けに退職した原因は、B氏との折り合いが悪く耐えられないことが理由であったこと等の苦情がA工場長に寄せられていた。
A工場長は、上記のようなB氏への苦情が耳に入ったり、B氏の態度に気付いた都度、B氏に指導的に注意していたが、一向に改善されることはなかった。


【弁護士からの通知】
会社はB氏を解雇したが、2月6日(月)に、本社でB氏の解雇後の対応について協議するために会議を開催した。その会議の結論としては、解雇という手段はとったが、気持ちとしては穏便に収めたいという意見で収束した。そんな矢先に、弁護士から内容証明が甲社社長宛てに送付されてきた。
(1) 内容証明1回目(2月8日付)の要旨
B氏の代理人となったこと。B氏の腰椎捻挫は業務上発生したものであること。業務上腰椎捻挫を発病し、療養中の解雇は無効であること。不当解雇により被った精神的損害について、慰謝料を求めること。法的手段をとることを検討していること。
(2) 内容証明2回目(2月13日付)の要旨
B氏が、精神障害に罹っていることが判明したこと。精神障害は業務上罹患したものであること。業務上発病した腰椎捻挫及び精神障害は療養中であり解雇は無効であること。甲社が、この事態に対して具体的な対処を弁護士に示すまで、解雇を撤回すること。現在、腰椎捻挫及び精神障害については健康保険で治療を受けているが、会社が労災保険に切り替える手続きを行うこと。不当解雇により被った精神的損害について、慰謝料を求めること及び法的手段をとることを検討していることに変わりはないこと。
なお、精神障害の発病の原因として次のことが挙げられていた。
・2012年2月3日にA工場長とトラブルがあった上に、突然に解雇通告を受けたこと。
・パート従業員が短期間に3人も辞めたにもかかわらず、速やかに補充することもなく、補充されるまでの6箇月間程度仕事量が増加したこと。そのため、普段の月より残業時間が相当程度増加したこと。
・2011年11月7日腰椎捻挫が業務上発生したこと。
・2010年11月頃から2012年2月に解雇されるまでの間に、複数回、A工場長から不当な叱責やパワーハラスメントを受けていたこと。

設問4
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 甲社は、弁護士が主張している事実を確認するため、直接の関係者であるA工場長のみならず、乙工場の従業員全員(B氏を除く)に協力を求め、B氏の就業状態、態度等に関する調査を行うことを決め、早速実行する。

 甲社は、紛争が公になった場合には、社会的信用への悪影響を与えることになる。紛争を早期に穏便に解決するため、弁護士と和解協議を行い、損害賠償については、A工場長がB氏に行ったハラスメントと、B氏がA工場長を始め他の従業員全員に行ったハラスメントとのそれぞれの程度を斟酌し、過失相殺することを提案する。

 事業場ごとにハラスメント相談窓口を設置することが望ましいが、乙工場の規模では、相談窓口を設置することがなかなか難しい。B氏からの相談はなかったものの、A工場長が従業員の相談に乗って、その役割を担っていたことが伺えるが、フォローが足りなかったといえる。

 内容証明において、「業務による心理的負荷」の数々を業務上精神疾患に罹患した理由に挙げているが、当該精神疾患が業務上であるか否かの判断に当たっては、「業務以外の心理的負荷」(家族関係や金銭関係等)や、「B氏自身の個体的な要因」(既往歴、性格傾向等)も含めて総合的に判断される。

 B氏が、腰椎捻挫及び精神障害ついて健康保険で既に治療を受けているが、それを労災保険に切り替えるには、当該傷病に関し、健康保険からこれまでに給付を受けた給付額を、B氏が健康保険の保険者に対して返還してからでないと、労災保険に請求することができない。




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